耳コピでエレクトーン(参考楽譜なし、超初級編)その1

 

 16 June 2013

エレクトーン用に一から耳コピする事は、特に今まで耳コピなどした事がない人にとっては、非常に敷居が高い事だと思います。自分もそうでした。楽譜がないという事は、つまり演奏できないと同義でした。

エレクトーン譜の体裁を取った楽譜を作るのも然る事ながら、レジストレーションも自作した事がないという話も良く聞きます。

 2009年に一度手抜き編気合い編を書いた事があるのですが、今回は参考楽譜はないし音感もない、レジストレーション自作は難しいけれど何とか耳コピしたいという方へ向けて、もう少し細かく説明したエントリです。

 

対象となりそうな方

 絶対音感とか相対音感とか何それ?

 コードって何?

 レジストレーションってどうやって作るの?

 というか専門用語が解らない

 とにかくこの曲がエレクトーンで弾きたくて弾きたくて仕方がない(これが一番重要です)

 

例によって例の如く耳コピが得意だという方、エレクトーン以外での耳コピ方法をお探しの方には全く参考にはなりませんので御了承下さい。

 

 

まず弾きたいと思っている曲の長さを御確認下さい。

初めて耳コピするという状況で、正直4分以上の長さのある曲だと途中で嫌になって投げ出す確率が高いです。急がば回れという事で、2〜3分以内の曲で練習をする方がモチベーションを維持できると思います。

それから、曲の速さが途中で変わったり、聴こえ方が変わったりするような曲(明るくなったり暗くなったりしている=♯や♭が増えたり減ったりしています=黒鍵を使う位置が変わります)も初心者には敷居が高いので避けた方が無難です。

 

曲が決まったら、次にざっくりと「何の楽器が鳴っているのか」を聞き分けられるか試してみて下さい。

※この時点では、音の高さは解らなくても大丈夫です。

例として風ノ旅ビトの「Nascence」で説明していきます。

原曲をお持ちの方は原曲を聴いて下さい。

 ニコニコ動画版

 YouTube版

 

Nascenceは最初にチェロの独奏で始まります。

次にリズムが鳴り出し、ハープとアップライトバス、そしてフルートが入ります。

続いてストリングスが参加し、バイオリンとフルートの二重奏→徐々にフルートが引っ込んでバイオリンのみに変化していきます。

 

もし弾きたいと思っている曲に使われている楽器が聞き分けられない程多かったり、そもそも何が鳴っているのか判らなかった場合、その曲は現時点では耳コピするのは非常に難しいです。

或いは「何の楽器かは解らなかったけれど、ドレミが聴き取れた!」という場合は、取り敢えず一番はっきり解った楽器だけを心に留めておいて下さい。

 

どうしても聴き取れなかったけれど、どうしても弾きたい! という時の裏技(?)

1.イヤホンを片耳ずつにして聴いてみる

2.ステレオから離れて聴いてみる

 

1.は、曲によっては片方からだけ音が出ている事もあるので余計な音をフィルターできたり、聞きたい音だけをはっきり聴く事ができたりします。

2.は離れる事によって背景音が埋もれ、主旋律(歌声など)が聴き取り易くなります。

 

耳コピでエレクトーン(参考楽譜なし、超初級編)その2

 

 23 June 2013

 注:このエントリはあくまで全くの初心者が初めて耳コピをするという状況を想定しています。アレンジができたりコード進行が解る方には参考になりません。

 

音を聞き分けられたら、次はその音をどの手で(または足で)弾くかを決めていきます(=レジストレーションを仮決めしていきます)。

 ※まだ音階は追わないで大丈夫です

 ※※音色は取り敢えずデフォルトのままで

Nascenceでは特にややこしい配置にはせず、主旋律であるチェロとバイオリンとフルートは右手で、ストリングスは左手(一部左足)で、アップライトバスは左足で演奏するように決めました。

この作業が結構重要で、余りにも自分の能力を逸脱した配置にしてしまうと弾き難さで挫折してしまいます。

自分は左手をばらばら走り回らせるような曲は苦手なので、基本的に左手は和音、動きのある音は右手か左足に任せています。任せられない時には端折ったりもします。

 

まずは音の変化を考えながらレジストレーションを幾つかセットしておきます。動画を見て貰えれば判ると思いますが、基本的にレジストレーションナンバー1から2、3、4、と移動していくのですが、ところどころで16や15に飛んでいるのはオクターブ違いや左手で弾けなかったパートを足に任せるために作り直したためです。

なのでレジストレーションナンバーは余裕を持って作成した方が、修正する事を考えると楽です。短い曲だとSONG一つで済みますが、4分以上の曲になると曲想によっては3つくらいSONGを使用します。

慣れてくると、自分の好みの音ややり易いレジストレーションチェンジのタイミングが見えてきます。

 

ここにリンクは貼りませんが、同じ曲をかでかどさんも演奏しています。

特に耳コピの再現度はかでかどさんの方が高いので、原曲の音をどう拾えばいいのか、或いはLayのようにどこまで端折っていけるのか、という意味でも非常に参考になると思います。

 

配置が決まったらいよいよ耳コピ開始です。

 

耳コピでエレクトーン(参考楽譜なし、超初級編)その3

 

 23 June 2013

一口に音を拾うといっても、音感がない人にとっては至難の技ですよね。

やり方は色々ありますが、

 1.主旋律(=右手)だけを拾っていく

 2.主旋律以外(=左手と左足)を先に拾う

 3.主旋律とベース(=右手と左足)だけ拾う

 4.頭から通して全部一気にやる

 5.判るところからばらばらに拾う

どれでも自分のやり易い方法でOKです。

主旋律が足にいったり、左手で上鍵盤を弾いたり右手で下鍵盤を弾いたりという変則の場合もあるので、上記はあくまでも目安です。

 

因みに自分は必ず頭から順番に拾っていきます。5.のばらばらも試した事があるのですが、お蔵入りを増やしただけでした(笑)

色々試した中でこれが一番先に進み易く、モチベーション維持にもなりました。さっさと音を拾っていけないので、すぐに飽きたり嫌になったりするのです。

 

さて、耳コピにあたり、音を聞いてそれがすぐに「シ♭だ」、「これはFm9だ」と判る人はいいのですが、自分のように「?」となる人はエレクトーンの鍵盤を叩きながら探していく事になります。

チェロの独奏の部分はチェロしか鳴っていないのですぐに終わりましたが、続く左手の和音部分で早速音が解らず苦労しました。

コードの知識のある人だとすんなり拾えるのですが、音感はないしコードって何? という人にはいまいち判り難い和音。

自分もコードの知識はかなり怪しいので、和音で拾えるところは拾って、結局判らなかったところは総当たりで音を探しました。原曲と微妙に音が違うところがコードとして拾えなかった部分です。

ただこの曲に関しては、和音がハープという減衰楽器であった事、完全な同時発音ではなく若干のずれがあった事が功を奏し、何とか総当たりで探す事ができました。

 

また「Nascence」では、原曲のキーはドとファに♯がついているのですが、自分にはどうしても半音下がって聴こえるので、結局トランスポーズという機能を使って音を強制的に変えています。

なので楽譜での表記はソラシレミに♭がついていて、演奏もそのようになっていますが、音自体はドファに♯がついたそのままで聞こえます。絶対音感のある人を混乱させる機能ですが(笑)、自分にとっては非常に便利且つ外せない仕様です。

 

耳コピでエレクトーン(参考楽譜なし、超初級編)その4

 

 27 June 2013

何度くり返して聞いても良く解らない。

絶対音感のない自分には大変に良くある状況です。

そういう時は、まずベース(左足)の音を決定させます。そして主旋律と左足から和音を類推します。

 

例えばチェロの独奏が終わって最初に和音が発音するところのベースは「シ♭」です。右手も「シ♭」です(トランスポーズ−1なので絶対音感のある人は適宜読み替えて下さい)。

全体の調は「ソラシレミに♭」がついています。

鍵盤を叩きまくって探すと「ファシ♭レ♭[B♭m]」の音が聞こえてきます。

両手両足で同時に鳴らして原曲と比べます。ちょっと音が足りないような気がします。

和音のあとに続く音を良く聴きます。

「謎の和音→ファ→[ラ♭]→シ♭」と音が移動しています。

謎の和音は三和音ではなくて四和音かも?(つまり「ファシ♭レ♭[B♭m]」ではなく「ファラ♭シ♭レ♭[B♭m7]」)

もう一度その配置で弾いてみます→多分合ってるだろう(笑)

 

毎回こんな感じで音を拾っています。

なので聴こえなかったり聞き間違ったり、そもそも判らなかったりが多発します。

対処法は「気にしない」です。

どう頑張っても完璧に音を拾い切る事はできないし、もし拾えても今度は両手両足だけでは足りなくなって弾けない事もあるので、思い切って豪快に端折ったり間違っていても気にしないスキルも大事です。

そう思うようになったのは、エレクトーン用に発売されていたFF Xの「Ending Theme」が原曲とかなり違っていた事に気付いたからでした。

楽譜を見ながら原曲を聴くと判りますが、細かいところを削ったり、小節ごと削除したりしています。

そういうのもありなんだ、と思った時から多少の違和感は気にしない事にしました。

 

大体の音を拾い終わったら、今度はレジストレーションのブラッシュアップです。

 

耳コピでエレクトーン(参考楽譜なし、超初級編)その5

 

 27 June 2013

レジストレーションデータのブラッシュアップは、自分としては一番楽しい時間です。

正直、リズムデータを弄るのは今でも大の苦手ですが、音色に手を入れていくのは面白いです。

 

仮決めしていたチェロの音はリード1から発音させていました。

デフォルトのままなのでイニシャルもアフターもほぼ中庸、ホリゾンタルはゼロです。このままでは大変に薄っぺらな音で表情も何もあったものではないので、調整をかけていきます。

「Nascence」の時はすぐに演奏して公開したかったので、モジュレータやキャリアの変更まではせず、タッチとエフェクトのみを変更しました。

 

まず重要なホリゾンタルを入れます。イニシャルとアフターも使い易い配置に変更します。ビブラートはユーザ設定にし、ディレイやスピードなど全てオフにします。これでホリゾンタルだけでベンドやビブラートを制御できるようになります。

リード1だけのチェロだと深みが足りないので、アッパーからも発音させます。VA音源からもチェロではない音を加えて、弦に弓を当てた時の擦過音が突出しないよう、調整します。

同じようにフルートもタッチ周りを変更し、VAで息を吹き込む時に出るエフェクトをイニシャルで発音させます。

バイオリンとフルートの二重奏では、逆にフルートのイニシャルを控えめに、バイオリンの擦過音をはっきり入れるためにイニシャルとアフターを強めに入れています。ビブラートを合わせるため、ホリゾンタルの数値は同じにしてあります。

 

ベース(左足)の音も余り目立たない部分ですが、左手と連動して演奏する(鍵盤の足りない部分、或いは手の届かない部分を左足に任せる=左手と全く同じ弾き方を要求される)事も多くなってきたので、ポリモードはいつもオンにしてあります。

複音を使う時だけオンにするものだと思われがちですが、ポリモードがオフだと音がいちいち途切れてしまい、違和感が拭えません。

また「Nascence」ではやりませんでしたが「Reset」などでは主旋律を左足に持ってきたりしたので、フレーズ感を出したい時にもポリモードを入れておくとかなり違います。この場合、イニシャルとアフターも重要になってくるので、それまでの「ベースを踏みます」とは違った演奏方法が必要になってきます。

但しオンにすると「ド」を踏むつもりでうっかり「シ」と「ド」を同時に踏んでしまうと、当然音も同時に鳴ってしまいます。

 ※ポリモードがオフだとトップノートのみ発音するので、たとえ同時に踏んでも「ド」しか発音しない

正確なペダル操作が求められます。

 

リズムは慣れるまでデフォルトリズムを流すという方法が一般的ですが、ちょっと進んでデフォルトリズムに一つ足す、或いは不要なリズムを削除するというだけでも変わります。

リズムの聴音もできるようになったら完全自作のリズムを作っていけると思いますが、自分はまだその域に達してはいません。

 

数値的な事を設定し終わったら、今度は実際の演奏です。

弾きながら細かい調整をくり返します。

自分の手の動きに合っていないレジストだと殴り弾きになったり逆に弱々しい演奏になったりと、とにかく弾き難い事になるので、調整は何度もくり返します。

その曲をどういう風に表現したいのかによってもレジストレーションは変わるので、自分の弾きたい音を出せるようになるまで作り込むのが基本です。

 

自分は聴こえない音と空間に残る余韻が好きなので、原曲では鳴っていない音を加えたり、全く使われていない音で残響やイニシャルを表現したりする事が多いです。

レジストレーションは弾き手の好みが一番反映されると思うので、どうすれば正しいとはいえない部分です。

自分の心地いいと思える設定を見つけられるのが一番いいですね。

 

まとめ。

耳コピは短めの曲から。

鳴っている楽器を聞き分ける。

どの楽器をどの手足で演奏するか決める。

音は総当たりで探す。判らなくても泣かない。

コードが解ればラッキー。

レジストレーション大事。

どういう演奏をしたいかじっくり考える。